抽象画をプロのように鑑賞する方法

いまや抽象画は、美術館・ギャラリー・アートフェアなどはもちろん、インテリアデコレーションとしてもますます身近なものになりました。

もちろん、その見かたは、限りなく自由です。

とは言え、どんなアートでもそうですが、「よく見てない」は致命的です。作品の意味は捉えにくくなりますし、楽しみも半減してしまいます。

そこで今回は、どんな抽象画でもポイントを見逃さずに、十分に堪能していただくためのポイントを共有したいと思います。



抽象画の父の言葉

ワシリー・カンディンスキー、『Composition VIII』、1923年、140 cm X 201 cm, 油彩、キャンバス、グッゲンハイム美術館 Photo:wikipedia

ロシア出身の画家ワシリー・カンディンスキー(1866-1944)は、「抽象画の父」と呼ばれ、抽象絵画を世界で初めて理論的にも実践的にも確立した画家です。

彼は、次のように語っています。

「耳は音楽に傾け、目は絵画に向け、そして……考えるのをやめなさい!その作品が、あなたをこれまで知らなかった世界へ歩き出させてくれたかどうかだけを自分に問えばいい。もし答えがイエスなら、それ以上何を望むというのですか?」

この言葉は、まさに「抽象画をどう見るか」の核心をついています。どういう意味かを詳しく見ていきましょう。


STEP 1: 意味探しをしない

パブロ・ピカソ、『鏡の前の少女』、1931-1932年、162.3 x 130.2 cm, 油彩、キャンバス、ニューヨーク近代美術館、Estate of Pablo Picasso / Artists Rights Society (ARS), New Yorkグッゲンハイム美術館 Photo:wikipedia

人間は視覚情報に触れると、自然に意味づけを始めます。これは、基本的な脳の働きです。

絵を前にして、人が「意味を探してしまう」のは脳の自然な反応なのです。

しかし、抽象画の前で多くの人がつまずくのは、この「何が描かれているの?」と探し始めてしまうことです。抽象画は、意味を解き明かすことに執着すると、もっと重要な視覚的要素を見落としてしまうことが起こります。

カンディンスキーが、「考えるのをやめなさい!」と言うように、その点が鑑賞を妨げる最大の要因だと考えていました。抽象画は「読むもの」ではないということです。

(抽象画であっても、ピカソのように具象も含まれている作品は、どちらとしても見ることができます)


STEP 2: 全体を感じる

マーク・ロスコ、『ロスコ・チャペル、』1964 – 1967、ヒューストン、テキサス

意味探しをしないで、その代わりに全体から感じましょう。

部分にとらわれず、まず全体に目を向けます。抽象画にかかわらず、絵画を観る時は、全体から始め、全体で終わるというのは基本となります。

抽象画の場合、カンディンスキーは「耳は音楽に向け」と言っていますが、その感覚は、オーケストラを聞くときに近いです。


STEP 3: 何がそう感じされるのか(絵画の要素を見る)

抽象絵画を全身で浴びていただくと、良い絵であればあるほどに、さまざまな感情に動かされます。たとえば、「色の組み合わせがきれい」「エナジーをもらった」「異次元の世界に連れていかれそう」などです。

そこで次に、「なぜ自分はそう感じたのかを、部分を観て確認する」といいでしょう。抽象絵画の場合は、次の要素に注目します:

  • 線    直線、曲線、長さ、太さ、多様性など
  • 色    暖色、寒色、配色のコントラスト、多様性、塗り方など
  • 焦点   視点が特定の箇所に引きつけられるか、さまようか
  • 構図   バランス、統一感、緊張感、広がりなど
  • リズム  色や線や形のパターン


STEP 4: イマジネーションで拡張する

ピエト・モンドリアン、『ヴィクトリー・ブギウギ』、1944年、127.5 cm X 127.5 cm, 油彩、キャンバス、ハーグ市立美術館 Photo:wikipedia

どんな絵の解釈でも、イマジネーションを膨らませるとその理解は格段に上がります。

この点は、抽象画でも例外ではありません。

特に、色と形とリズムは想像力を刺激します。たとえば、色ですと、ブルーは海、赤は心臓、黄色は光などにつながったりするかもしれません。色からさらに、具体的な情景を、形から似ている物を、線から、動きや方向性を、リズムから音を思い浮かべることもできます。

このようにイマジネーションで拡張すると、抽象画鑑賞は体験に変わるのでその世界観により近づけるだけでなく、あなたの感覚も豊かになります。


STEP 5: 余韻を大事にする

ワシリー・カンディンスキー、『色彩の習作:同心円のある正方形』、1913年、23.8 × 31.4 cm, 水彩、グアッシュ、クレヨン、紙、レンバッハハウス市立美術館 Photo:wikipedia

抽象画は、意味をあてるゲームではないため、鑑賞の終着点を迷うかもしれません。

この点も、音楽に似ています。鑑賞するときの自分の状態によって、感じ方は幅があります。だからこそ、その時に感じたことを余韻として楽しみ、余白を残して結論を出さずにおくと、さらにその作品の可能性に出会えることになります。

その方法ですが、たとえば「この絵はどんな気分を残しただろう」「第一印象と何か変わった点はあるだろうか」「他の絵との違いは何だったのだろう」などと自問しながら鑑賞を終えることは有意義です。記憶に残りますし、未来の新しい発見にもつながっていきます。


まとめ

抽象画と具象画では見かたの共通点もありますが、区別した方がいい点もあります。

抽象画を観ることは、画家と鑑賞者の直感的な知覚の対話と言えるでしょう。つまり、それは前言語的だということです。抽象画を観た時、脳科学的にも動き・感情・身体感覚を処理する領域が強く活動することからもわかっています。だから、基本的にその意味を探らなくても、鑑賞すること自体が有意義なのです。

皆さまが素晴らしい抽象画に出会えますことを、お祈りしております!

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *