ドキュメンタリー映画『ロスト・レオナルド』

レオナルド・ダ・ヴィンチあるいは彼と工房による作品、『サルバドール・ムンディ』、1500年頃、45.4cm × 65.6cm、木製パネル(くるみ材)サウジアラビア王太子ムハンマド・ビン・サルマーン所有、所在不明 『サルバドール・ムンディ』の謎に包まれた軌跡  今年6月、米国トライベッカ映画祭にてプレミアム上映されたドキュメンタリ―映画『ロスト ・ レオナルド(失われたレオナルド)』が、8月13日から米国で一般公開されています。 この映画の主役は、レオナルド・ダ・ヴィンチ作かどうかの真贋がわからないまま、所在さえも不明となっている絵画『サルバドール・ムンディ』。その絵の発見から、現在に至るまでの紆余曲折したミステリアスなストーリーを追っています。「ダ・ヴィンチ作だとしたら……」というワクワク感と、本物だった場合の膨大な金銭的価値によって翻弄された一枚の絵画の軌跡とも言えますね。 (映画についてではなく、絵画自体の軌跡の方は、別エントリーに詳しく書きましたのでそちらをご覧ください) https://www.youtube.com/watch?v=j0lXLGgQjYY デンマークの監督による美しいアートフィルム この映画ですが、日本でも公開されたらいいなと期待しております。と言うのも、ものすごく良くできたドキュメンタリーだからです。 デンマーク人の監督アンドレアス・コーフォード(Andreas Koefoed)が、初めて製作したアートフィルムなのですが、信じられないくらい優れた仕事をしています。 まず、色・光・カメラアングルが、非常に美しい! それと、 『サルバドール・ムンディ』 の真贋に直接的に関わった人々――アートディーラー、保存修復士、キュレーター、オークションでのバイヤーとセラー、アートジャーナリスト、ダ・ヴィンチ研究者など――のインタビューが抜けなく集められています。 永遠に残るフィルムですから、これだけの人々にインタビューで「真贋」を証言してもらうには、相当の説得力が必要だったでしょうね。将来、科学的手法で真贋にケリがついた時、専門家である自分が偉そうに反対のことを主張していたら、恥ずかしい気持ちが否めないでしょうから。 インタビューのカメラワークも工夫されていて、人が中央に座って真正面から撮影しています。証言台に立たされているようで、特徴的です。これ、実はコーフォード監督のねらいで、 『サルバドール・ムンディ』 の真正面向きの構図と重ねていたことを後で知りました。 『ロスト・レオナルド』 の監督、アンドレアス・コーフォード © Erika Svensson/Sony Pictures Classics 『サルバドール・ムンディ』は今どこに? 『サルバドール・ムンディ』…