アート窃盗のおすすめ映画3選

2025年10月19日、ルーヴル美術館でアート強盗が起こってしまいました。1998年にカミーユ・コロー作『セーヴルへの道、パリの眺め』が盗まれて以来、7年ぶりの事件です。 今回は絵画ではなく、フランス王室の宝飾品8点です。もともと9点盗んで、そのうち最も高価な1点は逃走中に落としたために回収できたことが報道されています。合計損害額は、約150億7000万円とのことです。 その最も高価な宝飾品が、次の皇帝ナポレオン3世の皇后ウジェニーの王冠です。回収はできたものの、大きな損傷を負ったことが伝わっています。 アレクサンドル・ガブリエル・ルモニエ、『皇后ウジェニーの王冠』、1855、直径16.5cm, 金、ダイヤモンド、エメラルド、ルーヴル美術館 宝飾品を盗むところがなんとも悪知恵が回ると申しましょうか、バラして売れば、足がつかずに取引できることをよく知っているわけです。ちなみに、上記王冠をバラすとしたら、ダイヤモンド1354個にもなります。 前置きが長くなりましたが、アート窃盗って好奇心をそそられます。今回のルーヴルでの盗難も、警備員の関与が疑われていたり、滞在時間わずか4分間の犯行とか、ミステリーに包まれています。 実際に、20世紀半ばからアート窃盗を題材としたスリリングな映画がたくさん制作されています。今回は、その中から完全に独断と偏見で面白かったものを共有したいと思います。 『おしゃれ泥棒』(How To Steal A Million?) 「おしゃれ泥棒」の1シーン Photo: visual-history.com 邦題「おしゃれ泥棒」は、原題(How To Steal A Million?)とはかけ離れていますが、写真のオードリー・ヘップバーン(ニコル役)とピーター・オトゥール(デルモット役)が、ニコルの贋作者の父を犯罪者にしないために、彼の贋作「チェリーニ・ヴィーナス」をパリの美術館から盗み出すコメディです。 1966年制作ですが、アート窃盗がそれほど深刻化していない頃の優雅な作品です。その一方、20世紀中頃からアートの年代測定などの科学分析技術が登場しましたが、この作品はその点を重要な筋書きとしてとらえられています。 1970年代からアート窃盗が増え、美術館セキュリティが強化されるにつれて、映画も巧妙なサスペンス系に変化して似通った作品が多くなります。ですから、それ以前のこの作品をまず押さえておく価値があります。 20世紀中ごろの美しいパリの光景、ヘップバーンのシックなジバンシーのファッション、美男美女のロマンスを通して、古き良き時代で癒されたい方には楽しい鑑賞時間になるに違いありません。 『トーマス・クラウン・アフェアー』(Thomas Crown Affair) 『トーマス・クラウン・アフェアー』の宣材写真 Photo: westonaic.org 1968年に世界的に大ヒットしたスティーブ・マックイーン主演作品『華麗なる賭け』の1999年制作のリメイク版です。2作品とも大富豪トーマス・クラウンが、スリルを求めて道楽で窃盗するストーリーです。 大きな違いは、オリジナルはボストンの銀行、リメイク版はニューヨークのメトロポリタン美術館を襲います。また、主演のスティーブ・マックイーンは、ジェームズ・ボンド役で一躍有名になったピアース・ブロンナンに代わっています。…