アート… 『アイルワースのモナ・リザ』―真贋はいかに? 06/19/202506/19/2025 ブログで書くには複雑なので後回しにしてきたトピックについて、意を決して書くことにしました。 それは、もうひとつのモナ・リザと言われ、ルーヴル美術館蔵『モナ・リザ』よりも早い時期に描かれたと考えられている『アイルワースのモナ・リザ』です。 ご存じの方も多いと思いますが、『モナ・リザ』には数多くのコピーが存在しております。その中のほとんどにレオナルド・ダ・ヴィンチは関わっていないことで決着がついています。 その一方、『アイルワースのモナ・リザ』は真筆であることを支持している研究者、著名コレクターが存在していてその真贋は混迷状態です。 今回は、その『アイルワースのモナ・リザ』についてわかりやすくまとめて共有してまいります! なお、ルーヴル美術館蔵『モナ・リザ』の基本情報は別エントリーをご高覧ください。 まずは観察してみてください レオナルド・ダ・ヴィンチ、『モナ・リザ』、1503〜1506年、おそらく1517年頃まで、77 × 53 cm、油彩、パネル、ルーヴル美術館 Photo: Wikipedia 『アイルワースのモナ・リザ』、16世紀前半、84.5×64.5 cm、油彩、キャンバス、匿名の国際コンソーシアム所有、Photo:Wikipedia ビジュアルから考察する まずは、ビジュアルから比較してみましょう。 アイルワースの方は、より若い女性が描かれ、円柱が柱礎だけでなく柱部分も含まれています。また、背景は、下3分の1は岩肌と林ですが、上3分の2が褐色で残されている点から未完成に見えます。 若い女性であることが、この作品が真筆と考えれる大きな理由とされています。なぜなら、ダ・ヴィンチが『モナ・リザ』を描いていたのが1503年であることは、フィレンツェの役人だったアゴスティーノ・ヴェスプッチ(1454-1512)が記しているからです。その時、リザ・デル・ジョコンドは24歳ですから説得力があるわけです。 女性は、顎のラインがシャープで、額、目の横幅がやや広いです。また、頭だけが前のめりになっています。 全体的に暗い色調を好みながら、ゴールドの光が差すような陰影の強いコントラストをつけています。 手も比較してみましょう。画家のスタイルや技量が出やすい部分です。下のアイルワースは美しいのですが、ニュアンスがなさすぎて不自然な印象を持ってしまいます。いかがでしょうか。 『モナ・リザ』と『アイルワースのモナ・リザ』の手の比較、Photo:Wikipedia 付け加えまして、アイルワースの方は、キャンバスに描かれています。これは、ダ・ヴィンチが木製パネル、特にポプラ材を好んだことに矛盾しています。 来歴から考察する ルーヴル美術館蔵『モナ・リザ』の非の打ちどころのない来歴と比べますと、アイルワースの方はかなり謎に包まれています。 最初の信頼性ある記録は、なんと1913年まで下ります。英国のキュレーターであり、コレクターだったヒュー・ブレイカーが、イギリスサマーセット(ロンドンから南西250km)の邸宅で絵画を再発見しています。 その後は、次の通りです(曖昧なものは削除しています): 1914-1918 第一次世界大戦の戦禍を逃れて、ボストン美術館で保管される 1936年…