アート ゴッホ絵画盗難のなぞ 04/19/202005/17/2020 『春のヌエネンの牧師館の庭』Photo by HANDOUT/Marten de Leeuw/EPA-EFE/Shutterstock (10597392a). 2020年3月30日、フィンセント・ファン・ゴッホ(1852-1890) の167回目の誕生日の午前3:15頃にその事件は起こりました。 オランダ北部、ラーレンにあるシンガー・ラーレン美術館から、『春のヌエネンの牧師館の庭』(1884年作)が盗まれました。 オランダ国内のコロナ感染拡大を受け、美術館は3月12日から休館中でした。人々がコロナへの懸念に心奪われている隙を狙い、しかも玄関のガラス製ドアを破って侵入するという大胆な犯行でした。 シンガー・ラーレン美術館 ところで、絵画の盗難は繰り返されます。犯人像は、ほぼ3通りしかありません。 その特定の絵画が好きで盗む素人その特定の絵画が欲しい人から依頼されたプロお金儲け目的で盗むプロ・素人 ただ3つめは、有名な絵画を換金すれば足がつくということは当然知っているでしょうから、現実的な可能性として大部分を占めるのは1と2です。 起こりやすいのは、2でしょう。そして警察も盗みのプロやその関係筋という観点から、ある程度ルートを追いやすいのです。 難しいのは、1です。犯人が明らかな痕跡を残していない場合は、犯人像が絞りにくいのです。今回の犯罪は、ゴッホの誕生日に行われたことから、なんとなく1の可能性もある気がしてなりません。 しかしながら、オランダで近年盗まれたゴッホ28作品はすべて、無事に美術館へ戻っています。本作品もできる限り早く戻ることを願っております。 それにしても、この絵画、ゴッホの円熟期のカラフルな作品とは全く異なりますね。その価値も数億円前後でしょうか。ただ、複雑な構図のまとめ方と女性のハッとさせるたたずまいに、ゴッホの突出した感性を感じずにはいられません。犯人が欲しかった気持ちは、十分に理解できます。
アート 今こそ『ひまわり』を鑑賞しておきたい 12/18/201901/28/2023 今のうちに、SOMPO美術館 所蔵のフィンセント・ファン・ゴッホ『ひまわり』をじっくりと観察しておくといいかもしれません。 常設展示なので、開館時には思う存分に観ることができます(混雑していなければですが)。美術館の粋なご配慮で、ベンチも置いてあります(ない時もあるかもしれないのでご注意を)。 まずは、そのSOMPOバージョンの 『ひまわり』 を御覧ください。 フィンセント・ファン・ゴッホ、『ひまわり』、100 x 76cm、SOMPO美術館 画像でも、ファン・ゴッホの創造性に圧倒されますが、 実物は迫力があり過ぎて、言葉にもできないくらい名画です。短時間ではとても見尽くせないです。 でもなぜ、今鑑賞しておくべきなのでしょうか。 その理由は、来年のロンドン・ナショナル・ギャラリー 展で、ヨーロッパから門外不出だった、第2の『ひまわり』 が、次のようなスケジュールで来日するからです。 国立西洋美術館(東京)2020年 3月3日(火)〜 6月14日(日) 国立西洋美術館(大阪)2020年 7月7日(火)〜 10月18日(日) フィンセント・ファン・ゴッホ、『ひまわり』、 92.1 x 73 cm、ロンドン・ナショナル・ギャラリー ロンドン・ナショナル・ギャラリー所蔵 『ひまわり』 ですが、ヨーロッパを出たことのない、しかもナショナル・ギャラリーから移動されることさえ珍しい絵画です。 それほどまで大切にされている絵画…
アート 世界一古いナラティヴアートがアジアで発見された? 12/13/201906/30/2020 近年、洞窟画からワクワクする発見が相次いでいます。 まず2018年は、従来の学説が覆った記念すべき年でした。どういうことでしょうか。 今まで、クロマニヨン人が史上最初のアーティストだと信じられてきました。ところが、スペイン3か所の洞窟画で実施された年代測定で、6万4千年以上前にまで遡ることが判明したからです。 つまり、史上初のアーティストは、 クロマニヨン人 から、想定したよりもはるかに洗練されていたネアンデルタール人へと書き換えられたわけです。 その画像を挙げましょう。右の描き起こしの方を見ると、動物のお尻部分がはしご、あるいは柵に囲われているように見えますね。あくまでも推測に過ぎませんが…。 スペイン、ラバシェガ洞窟壁、右は描き起こし 写真:ロサンジェルスタイムス さらに2018年後半には、南アフリカで、7万3千年前まで遡るドローイングも発見されました。下の画像をよく見ると、9本のラインが交差して書かれています。何かのシンボルでしょうか。 南アフリカ、ブロンボス洞窟 そして2019年末、科学的年代測定法が再び、また既存の学説を書き換えるニュースが入ってきました。 何かと言いますと、世界一古いナラティヴ(ストーリーを語る)アートの年代が書き換えられそうなのです。しかもその所在地は、ヨーロッパでもアフリカでもなく、アジア。しかもその年代は、4万4千年前まで遡ります。 狩猟シーン、インドネシア、スラウェシ島 写真:Ratno Sardi/Griffith University その絵は狩猟シーンで、左の人間らしき人々がロープや槍のようなもので、右の牡牛のような動物を仕留めようとしています。左の方はよく見えませんが、右の動物の描線は迷いなく描かれています。 これまで最初のナラティヴアートは、 2万年以上前よりも遡らないフランスラスコー洞窟と信じられていました。それを2万年以上も更新したわけです。 今後も、「人間とクリエイティビティ」の起源の解明に目が離せません。
アート 良い病院のアート 12/07/201910/21/2022 久しぶりに都内の大病院のひとつに行ったのですが、あまりの混雑ぶりに圧倒されました。広い待合室にもかかわらず、空席はまばらでした。予約があっても、30分以上待つのは普通だそうです。 待ち時間が長かったからといって、効果的な読書やパソコン作業ができないのが、病院という場所ではないでしょうか。 もちろん病気への心配もありますし、医師にどのように説明しようかを頭の中でリハーサルしたりして、落ち着かない気分だったり、ぼーっとしたり、本体の自分というわけにはいきません。 最近のデンマークの研究で、患者へのアートの効用が実証されています。 ■待合室の患者の満足度が向上する ■治療効果も上がる(入院期間の短縮、痛みの許容度など) スペンサー・フィンチ、夏山へ行く (2017)、 クリーヴランドクリニック、Courtesy of James Cohan Gallery. Photo: Steve Travarca. artnet.com でも、いったいどんなアートが患者にとって最も有益なのでしょうか。 この点に関しては、まだ一致した見解はありません。ただ 風景画が、 不安な心情や弱った体をいたわるために有効なことは間違いないでしょう。 キャサリン・オピエ、中間地点 (2010/11). ©Catherine Opie, courtesy Regen Projects. Photo: Neil Lantzy. artnet.com…