ゴッホ絵画盗難のなぞ

『春のヌエネンの牧師館の庭』Photo by HANDOUT/Marten de Leeuw/EPA-EFE/Shutterstock (10597392a).

2020年3月30日、フィンセント・ファン・ゴッホ(1852-1890) の167回目の誕生日の午前3:15頃にその事件は起こりました。

オランダ北部、ラーレンにあるシンガー・ラーレン美術館から、『春のヌエネンの牧師館の庭』(1884年作)が盗まれました。

オランダ国内のコロナ感染拡大を受け、美術館は3月12日から休館中でした。人々がコロナへの懸念に心奪われている隙を狙い、しかも玄関のガラス製ドアを破って侵入するという大胆な犯行でした。

シンガー・ラーレン美術館

ところで、絵画の盗難は繰り返されます。犯人像は、ほぼ3通りしかありません。

  1. その特定の絵画が好きで盗む素人
  2. その特定の絵画が欲しい人から依頼されたプロ
  3. お金儲け目的で盗むプロ・素人

ただ3つめは、有名な絵画を換金すれば足がつくということは当然知っているでしょうから、現実的な可能性として大部分を占めるのは1と2です。

起こりやすいのは、2でしょう。そして警察も盗みのプロやその関係筋という観点から、ある程度ルートを追いやすいのです。

難しいのは、1です。犯人が明らかな痕跡を残していない場合は、犯人像が絞りにくいのです。今回の犯罪は、ゴッホの誕生日に行われたことから、なんとなく1の可能性もある気がしてなりません。

しかしながら、オランダで近年盗まれたゴッホ28作品はすべて、無事に美術館へ戻っています。本作品もできる限り早く戻ることを願っております。

それにしても、この絵画、ゴッホの円熟期のカラフルな作品とは全く異なりますね。その価値も数億円前後でしょうか。ただ、複雑な構図のまとめ方と女性のハッとさせるたたずまいに、ゴッホの突出した感性を感じずにはいられません。犯人が欲しかった気持ちは、十分に理解できます。