レオナルド・ダ・ヴィンチの手稿 Leonard Da Vinci’s Notebooks
ダ・ヴィンチは、1478年から死の直前までメモ、走り書き、スケッチ、図を書き留めていました。21の手稿、合計約4100シートと断片が現在まで保存されています。
それぞれのシートは、2ページを構成します。また2ページは、フォリオとして同じ番号をつけ、表と右側、裏と左側でそれぞれrecto、versoと分類することがあります。
絵画についてだけでなく、建築、機械工学、工学、解剖学、鳥の飛翔などの広いトピックについて、ミラーライティング(鏡文字)という左右反転させた方法で書かれています。
その大部分は、近年のデジタル化によってオンラインで閲覧できるようになりました。タイトルをクリックして覗いてみてください。
- アトランティコ手稿(Codex Atlanticus)、1478〜1518年頃、 アンブロジアーナ図書館、ミラノ
12巻、1119シートから成る最大で、最も重要な手稿と考えられています。数学、幾何学、植物学、動物学、軍事技術、天文学など広範囲の領域をカバーしています。
ダ・ヴィンチの死後、散逸していた手稿は、彫刻家ポンぺオ・レオーニ(1533-1608)によってアトラス(地図帳)の大きさに製本されたました。
- アランデル手稿 (Codex Arundel)、1478〜1518年頃、 大英図書館
主に機械工学や幾何学について書かれた283シートから成ります。 17世紀前半に購入した第2代アランデル伯爵トーマス・ハワード (1595-1646) にちなんで名づけられました。
- フォースター手稿 (Codex Forster)、1487〜1505、ヴィクトリア&アルバート博物館蔵
幾何学、機械工学、水力学などについて書かれたフォースターI〜III(それぞれ55、160、89シート)と3巻から成ります。
1860年代に所有していた著者、歴史学者ジョン・フォースター(1812-1876)からビクトリア&アルバート美術館に遺贈されています。
- レスター手稿(Codex Leicester)、1506〜1508、1510〜1512年頃、ビル&メリンダ・ゲイツ蔵
1994年ビル・ゲイツがニューヨーククリスティーズのオークションで、3千80万ドル(日本円約30億円)で落札したことで一躍有名になりました。一年に一回世界のどこかで一般公開することを表明しています。
36シートから成り、その内容は、化石、水流学、天文学などです。
- マドリード手稿(Codex Madrid)、1493〜1505、スペイン国立図書館
1966年に再発見されたこの手稿は、2巻から成り、マドリード I (1493〜1499)は、191シート、マドリード II (1491〜1505)は、157シートが含まれています。
その内容は、主に機械工学や幾何学についてですが、ダ・ヴィンチが当時読んでいた116冊の書籍リストも含まれています。
- 鳥の飛翔に関する手稿(Codex on the Flight of Birds)、1505年前後、トリノ王立図書館
鳥の飛び方のメカニズムについて探求した18シートという短い手稿です。元々は、下記のパリ手稿 Bと一緒に製本されていました。
重力、バランス、空気抵抗、振動、旋回する動きなどが詳細に記録されています。
- トリヴルツィオ手稿(Codex Trivulzianus) 、1487〜1490、 スフォルツェスコ城 、ミラノ
多くのページはラテン語のボキャブラリーリストで、 ダ・ヴィンチのラテン語への熱心な勉強ぶりがうかがえます。その他には、軍事や建築についてのメモが見られます。
51シートが現存していますが、元々少なくとも62シートあったと推測されています。この手稿を18世紀にこ所有していた トリヴルツィオ 家の名に由来して名づけられています。
- ウルビナス手稿(Codex Urbinas)、1520〜1530年頃、バチカン図書館
ダ・ヴィンチの死後、ほとんどすべての手稿は友人であり弟子であった画家フランチェスコ・メルツィ(1491-1570)によって相続されました。 メルツィ は、ダ・ヴィンチ 自らが生前から望んでいた絵画についての手稿( Libro di Pittura, Book of Painting )をまとめることに着手しましたが、未完のまま亡くなりました。こうして残されたのが、バチカン図書館所蔵の 『ウルビナス手稿1270』です。
この手稿の縮約版は、1651年に フランス語とイタリア語で 『絵画論』(rattato della Pittura, Treatise on Painting)として初めて刊行されました。
- パリ手稿(Paris Manuscript)、1487〜1515、フランス学士院
全14巻で、アルファベットJを除くA〜Mで構成されています。AとBは、下記のアッシュバーナム手稿の経緯により、それぞれ2巻から成ります。
合計1113シート(アッシュバーナム手稿を含む)から成り、アトランティコ手稿に次ぐページ数です。 A〜M は、制作年代順ではなく、最も早く制作されたのが、B(1488〜1490)で、遅く完結したのが、G(1510〜1515)と考えられています。
紙の大きさはバラバラで、一番大きいのが、C(315 X 220 mm)で、最も小さいのが、K(9.6 X 6.5 mm)です。
内容は、絵画から、機械工学、工学、建築、幾何学、植物学、ラテン語、地質学など 広範な領域をカバーしています。
- アッシュバーナム手稿(Codex Ashburnham)、1488〜1492年、フランス学士院
アッシュバーナム手稿 は2巻で構成され、それぞれ34、16シートが含まれています。
元々パリ手稿AとBのそれぞれ後半部分であったものが、1840年頃 イタリア伯爵で数学者だったグリエルモ・リブリ に盗まれ、その後、英国 第4代アッシュバーナム伯爵に売られますが、1891年にフランスに戻り、フランス学士院でパリ手稿AとBとともに保管されています。
そのため現在、パリ手稿AとBはそれぞれ2巻からなります。アッシュバーナム手稿であった部分は、パリ手稿A2185、パリ手稿B2184として分類されています。
内容は、2184は建築学など、2185は主に絵画についてです。
- ウィンザー手稿(Codex Windsor)、1475〜1518、イギリス王室コレクション、ウィンザー城
約600以上のシートから構成されます。有名な人体解剖図から、人、馬、動物、地図、水流学などを含んでいます。
ウィンザー手稿の大部分は元々、アトランティス手稿と同様に ポンぺオ・レオーニ によって製本されていましたが、19世紀に保存と展示上の見地から切り離されています。
イギリス王室コレクションサイトから各作品を検索できます。