アート 母の日にはやっぱりこの絵画 05/08/2025 母の日が近づくと、頭に画像が浮ぶのが、アメリカ人画家ジェームス・マクニール・ホイッスラー(1834-1903)作『灰色と黒のアレンジメントNo.1』(1871年、オルセー美術館蔵)です。 通称『ホイッスラーの母』と呼ばれていますが、当時67才だった実母アナ・マクニール・ホイッスラーを描いた肖像画です。 母の凛としている姿であり、あたたかさもあり、スタイリッシュで、ダ・ヴィンチ作『モナ・リザ』に匹敵するマスターピースと感じる作品です。 母の日をお祝いして、詳しく見てまいりましょう。 ジェームス・マクニール・ホイッスラー、『灰色と黒のアレンジメントNo.1』、1871年、144.3 X 162.4 cm, 油彩、キャンバス、オルセー美術館蔵 世界で最も親しまれている3作品のひとつ ダ・ヴィンチ作『モナ・リザ』、ムンク作『叫び』と並び世界で最も親しまれている3作品のひとつと言えるでしょう。世界中でもはやアイコン的な絵画となっています。 ホイッスラーの評価を不動のものにした作品 ホイッスラーの母国アメリカでも「国外にあるアメリカ人画家の作品の中で最も重要」と考えられています。 1932年に初めて里帰りを果たし、ニューヨーク近代美術館で公開されたのを皮切りに、1933年のシカゴ万国博覧会では、約2500万人の訪問者の目玉となり、その後10都市をツアーしています。 翌年には母の日のための記念スタンプとして発行され、さらに1938年にはペンシルバニア州アシュランド市には、大恐慌時代の母への賞賛として絵画をベースにした約2.4メートルの銅像が制作されています。 1934年5月発行の3セント切手 母のアイコンとして人気が揺るがない作品 世界中で母のイメージそのものとして、映画・TV番組・CMなどでたびたび取り上げられています。 顔の部分や彼女の視線や膝の上にかかえるもの等を変えて、母の個性を出したパロディーとしてもたびたび登場しています。多くの人の心に母のアイコンとして定着するほどに強いインパクトを与え続けています。 通称『ホイッスラーの母』のさまざまなパロディー例 ジェームス・マクニール・ホイッスラーについて ジェームス・マクニール・ホイッスラー、『灰色のアレンジメント:自画像』、1872年、74.9 X 53.3 cm、 油彩、デトロイト美術館蔵 ホイッスラーは、アメリカマサチューセッツ州で生まれながら、1855年に絵画修行のためにパリへと旅立ってから主にロンドンで活動し、2度と母国へ戻ることはありませんでした。 ホイッスラーはこの作品に至るまでのあいだ、その名は広く知られてはいたものの、その才能を思う存分に発揮できる独自のスタイルを確立できていませんでした。 その10年余りの間に制作された肖像画や風景画には、ラファエロ前派、印象派、東洋文化や浮世絵の影響が見られますが、消化しきれていない特徴があらわれ、試行錯誤の様子が伺えます。 ただし、伝統にしばられない手法(白のカーテンに白のドレス、ありえない床の傾斜など)が、近い未来に何かやってくれそうだという予感はします。…