ダ・ヴィンチ没後500周年ということで、今年は、世界中の美術館、図書館、博物館で関連する展覧会が開催されています。
ダ・ヴィンチそのものがフォーカスではないのですが、素晴らしい美術展が、ワシントン・ナショナル・ギャラリーで催されています。
それが、『ヴェロッキオ:ルネッサンス時代フローレンスの彫刻家・画家』です。2019年9月15日〜 2020年1月12日となります。
ヴェロッキオ(1435-88頃)の名前になじみがない方も多いのではないでしょうか。ところが実際には、レオナルド・ダ・ヴィンチ の他、 ピエトロ・ペルジーノ(ラファエロの師)、そしておそらく サンドロ・ボッティチェリ を育てた恐るべきアーティストなのです。
残念ながら、ダ・ヴィンチの師匠ということばかりが強調されている影で、 ベロッキオ の技術、才能、芸術性は過小評価されているのが現実です。
この展覧会は、まさに「ルネッサンスに、ヴェロッキオあり」と痛感させてくれます。もしもヴェロッキオが師匠でなければ、 ダ・ヴィンチはここまでの芸術家としての名声は築けなかったでしょう。
では、ヴェロッキオの作品を見てみましょう。
彫刻家としてトレーニングを積んでいたこそ、人物の存在感、またベールやケープやドレスの質感と詳細がみごとに描き分けられています。
この絵画の写実性を、ヴェロッキオは、もちろん彫刻でも遺憾なく実現しています。
手とドレスの質感を、あまりにもみごとにとらえられています。この彫刻で思い出されるのが、あのダ・ヴィンチ作『ジネーヴラ・デ・ベンチの肖像』です。
ダ・ヴィンチがまだヴェロッキオの工房で修行していた20歳前後の頃の若描きです。確実に 師から彫刻の高度な技術を学びながら、同時に彼の独自性である光と影のコントラストへの興味が出始めているのがうかがえます。
残念ながら『 ジネーヴラ・デ・ベンチの肖像 』は、下部が損傷を受けて欠損しています。しかしながらこの度、ナショナルギャラリー、ワシントンDCが 習作などから、その部分をデジタル複製して展示しています。
もしもダ・ヴィンチが、アンドレア・デル・ヴェロッキオが率いる工房に入っていなかったら、彼の生涯は全く異なったものだったに違いないことを感じさせてくれる美術展です。