『魂の経営』と『両利きの経営』

コロナ禍の政府の動きを見ながら、「日本のリーダーシップは大丈夫か?」と感じずにはいられない今日この頃ではないでしょうか。

今回は、「不透明な事態のリーダーシップはどうあるべきか?」という、今まさに旬なトピックについて教えてくれる2冊の書籍を共有したいと思います。

結論から申し上げますと、知識や経験だけではダメで、やはり「知覚力」が問われるのです


  • 富士フィルムはいかに危機を乗り越えたか?

この2冊に共通するのは、富士フィルムホールディングスのサクセスストーリーです。

『魂の経営』の著者は、現富士フィルムホールディングス代表取締役会長、古森重隆氏です。ご存知の方も多いと思いますが、同社の大改革の立役者です。今年6月には、退任して最高顧問となる予定です。


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古森氏は、フィルム産業低迷期の始まりであった2000年に社長に就任して医療・製薬・液晶分野を開拓し、成長を牽引し続けた人物です。

その一方、フィルム産業でライバルだったコダックは、ちょうど古森氏が社長就任した頃から、みるみると衰退していきました。そして遂に、2012年に倒産処理手続きに至っています。この2社を比較すると、当時の危機の大きさと古森氏の手腕の凄さは簡単にご想像いただけるでしょう。

『魂の経営』は、そのキーパーソンである古森氏自身の回想録です。経営手法の他、心情や信念にも踏み込まれています。

他方、チャールズ・オライリー(スタンフォード大教授)&マイケル・タッシュマン(ハーバード大教授)著『両利きの経営』は、経営学的視点から、富士フィルムとコダックの戦略の差にフォーカスして書かれています。

古森氏の主観、研究者の客観的ビジョンを並べて読むと、危機の乗り越え方がより深く理解できて面白いです。


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  • しっかり知覚してから土俵に立つ

不透明な事態で成功するためには、もはや知識とか経験の比重は少ないという事実も浮かび上がってきます。

なぜならば、スピーディーに変化する世の中では、自分の脳だけで判断しても役に立たないからです。その大前提として、「何を観るか」がどうしても問われます。

富士フィルムが、PDCA(Plan, Do, Check, Action)ではなくて、STPD(See, Think, Plan, Do)を重視しているのは、こうした理由によるのです。


  • 直観とは知覚の賜物

さらに古森氏は、リーダーには、マッスル・インテリジェンスが必要と言います。


「やると決めたら、スピーディーにダイナミックにやる。…..中略…..火事などの災害に見舞われられたときに、どの方向に、どれくらいの速さで走って逃げれば逃げ切れるか。そんなことは教科書には書いていないし、学校の成績とも関係がない。そういう状況で切り抜けられる人と、そうでない人の差は、インテリジェンスの差ではなく、本能・直感の差である」


この「直感」と書いていらっしゃいますが、ビジネスの決断の話なので、おそらく「直観」の方を意図しているものと思います。眼の前の状況を観察しながら、それが脳の中で統合されて直観がふっと舞い降りてきます。この時は、それまで自分が知覚してきた蓄積(いわゆる知識)が功を奏します。


  • まとめ

予測ができない時代の、あるいは緊急事態下での優れたリーダシップは、知覚と非常に密接な関係があるわけです。

それとタイトル『魂の経営』の魂とは、サムライスピリットを意図しているようです。究極の危機でも強い行動基盤になるのは、侍のように美学に貫かれた魂であるということです。

ビジネスでリーダシップを発揮すべき方々はもちろん、日本の政治家にも手に取っていただきたい2冊です!



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